解き明かされるIKARIにまつわる数々の謎

いろいろと謎が多いIKARIというユニットについて、大変貴重な証言をいただいたので、その謎にせまってみたいと思います。

 

IKARIというユニットでは公式に2つの音源がリリースされています。しかし、両方ともメンバーが異なったりシークレットになっていたり、でも関係がない訳ではなかったりして謎が多いユニットとなっていました。

 

IKARILucky Time/No Perspective

 

ikari.jpg

 

まず最初にリリースされた作品はIKARI名義のソノシート。
P-MODEL ANOTHER ACT
シリーズの第一弾として19842月に発売。
レーベルはTHE LOODSの西村茂樹さんによるR.B.F. RECORDS。「LUCKY TIME」と「NO PERSPECTIVE」の2曲入り。

広瀬充 - Voice

平沢進 - TALBOWhite NoiseStoneRoomSimulation

三浦俊一 - GuitarRhythmBox

 

というクレジットになっています。

三浦さん平沢さんは当時のP-MODELのメンバー。広瀬さんは当時のP-MODELのマネージャーです。

 

広瀬さんがボーカルとなってはいるもののLUCKY TIMEを聴けば一目瞭然。すでに公然の事実として知られているように、ボーカルは平沢さんです。

 

作詞も広瀬さんになっていますが、この曲は198111月のカナリア籠の展開図~の3日目の前半レア曲オンリーの日に演奏された記録がある曲です。広瀬さんがマネージャーになったのは83年。81年当時は雑誌編集者でP-MODELと関りはあったようですが、作詞をする関係だったのかという所では非常に疑問です。(作詞についてはあくまで憶測であり、証言があった訳ではありません)

 

なぜ広瀬さんがボーカルをしていないのかという事については証言を頂いたのですが、ここで解明するのは問題がありそうなので自粛いたします。

 

もうひとつ、

IKARIというユニット名の由来についての話です。

アルバム「アナザーゲーム」発売延期の件でレコード会社と揉めて帰ってきた時に平沢進に「その怒りを音で表現するんだ」と言われてIKARIを結成したとの逸話が公式本でもかかれていますが、IKARIという名前自体はもっと前からあったという新事実がわかりました。

 

広瀬さんと西村茂樹さんがアレルギーのライブを見に行った時に演奏された「El Dorado」という曲。それを聴いた二人が「♪わーれはー神の〜怒り〜か〜」という歌詞の「怒り」という部分がツボにはまり「「怒り」!「怒り」て、何それ! ギャハハハハ!」と大笑い。それがIKARIの名前の由来だそうです。

 

その裏付けとして、当時のP-MODELのファンクラブの会報誌「PERSONAL PULSE VOL.14」に、こちらの記事が載っています。

 

hirose.JPG

 

この号はアナザーゲームが当初の発売直前の号ですが、まだ発売延期が決定する前です。しかし、広瀬さんの名前に”Ikari”がついています。

もしかしたらバンド結成についてはその逸話のとおりなのかもしれませんが、Ikariという名前についてはそれより以前からのものだったようです。

 

そのIKARIですが、何度かライブを行っていたようです。

P-MODELの前座として出演した時は

広瀬充、平沢進、三浦俊一、菊池達也、田井中貞利というメンバーでした。

しかし、KERA、三浦俊一、中野照夫、田井中貞利というメンバーでのライブなどもあったようです。

 

いろいろなIKARIがある事についても謎でしたが、何故に色々なカタチのIKARIがあったのかについては、IKARIが「商標フリー」のような、関係者がテキトーに使えるモノだったからのようです。

 

 

V.A.REBEL BRAIN FACTORY

 

rbf.jpg

 

もうひとつのIKARIの公式音源はオムニバス盤に収録されています。198511月発売。THE LOODSTHE POGOなど6バンドの中にIKARI名義の「Coroured Soul」が収録されています。

こちらのオムニバスもソノシートのIKARI同様、R.B.F. RECORDSからリリース。(販売はCAPTAIN)

各バンドのメンバーが表記されているページがあるのですが、IKARIについては「?」との表記のみでメンバーはシークレット。

 

しかし、楽曲を聴けば間違いなくわかるのは、ボーカルが有頂天のKERAさんだという事。メンバーがあきらかにP-MODEL関連のソノシートとは異なる事はわかります。

 

長年謎につつまれていた、このIKARIのレコーディングメンバーが判明しました。

 

IKARI / Coroured Soul」のレコーディングメンバー

 

KERAVo.

庭野ハルヲ(G. Pf.

西村茂樹(G. Cho.

鈴木浩司(G.

カタル(B.

佐藤カツ from LIBIDODs.

 

下から4人が当時のTHE LOODSのメンバーだそうです。庭野さんは85年頃はばちかぶりのギタリストでした。

 

なぜ、このような編成でIKARI名義にてオムニバスに参加したのか。

その理由ですが、プロデューサーの西村さんがこのコンピレーションアルバムを作るにあたり当初「6バンド2曲ずつ」で行こうと考えていたそうです。

しかし、収録予定だったバンドのうち1つのバンドのレコーディング中の音作りを巡る齟齬が生じ、外れてもらうことになったそうです。しかしもう1バンド欲しいという時にIKARIをやってしまおうと思いつき、収録される事になりました。

 

Coroured Soul」は当初、THE LOODSの新曲として練っていた楽曲だったそうです。しかし、THE LOODSとして演るにはポップ過ぎるとの理由でお蔵になりそうだった所、「謎のバンドIKARIの楽曲として演ろう!」と云う事に。

しかし、西村さんが「自分がそれを歌えば正体がTHE LOODSであると容易くバレてしまう。それじゃ面白くない」との理由でボーカルをKERAさんに頼んだところ快諾。そんな訳でP-MODELのメンバーによるIKARIとは別の第2IKARIが誕生する事になりました。

歌詞については、THE LOODSのモノとしては仕上がっていなかった為、KERAさんが歌うのに際して、「怒り」というワードも取り入れつつ、やや甘めのモノを書いてみたそうです。

 

このIKARIの「Coroured Soul」ですが、19851120日 新宿LOFTのインディーズハルマゲドンの初日 有頂天に西村茂樹さんがゲスト参加してツインボーカルで演った事があるそうです。

 

余談ですが、平沢さんはIKARIの件だけでなく、THE LOODSのアルバムにも参加しています。その関係を意外に思う人もいるかもしれませんが、平沢さんがプロデュースとキーボードで参加しているTHE LOODSSTOP FUCKIN' AROUND!」の2006年にリイシューされたCDのブックレットにそのあたりの経緯が記されているので気になる方はチェックして下さい。

 

35年以上たってIKARIについていろいろな事がわかると思ってもみませんでした。大変貴重な情報に感謝し、自分だけにとどめておくのは大変勿体ないのでこちらに記させて頂きました。本当にありがとうございました。

 

 

□□ IKARI Live Data □□

 

1983/10/02 新宿LOFT

LOOPING OPPOSITION

共演:

P-MODEL

Member:

広瀬充(Vo)・平沢進&三浦俊一(G)・菊池達也(B)・田井中貞利(D)

演奏曲目:

01: LUCKY TIME

02: NO PERSPECTIVE

03: ダイジョブ

 

P-MODELの前座として出演。ソノシート発売前で、この時は広瀬さんが本当に歌っていた。

 

1985/12/24 吉祥寺バウスシアター

HEY LORD! Holy Night Special

共演:

キャ→、ばちかぶり、D-DAY、メトロパルス(メトロファルスセッション)LIP CREAMANTIPRIVATESTHE LOODS

Member:

KERA(Vo)・三浦俊一(G)・中野照夫(B)・田井中貞利(D)

演奏曲目:

01:メビウスの帯

02:逆転僧

03:赤鼻のトナカイ

04: LUCKY TIME

05: NO PERSPECTIVE

 

西村茂樹さん企画のオールナイトイベントのマル秘ゲスト枠にてIKARIが登場。「メビウスの帯」は歌はサビの部分のみ。まだワンパターン発売前で歌詞自体がなかった可能性も。「逆転僧」はPモデルの「ダンス素凡夫」の元となった幻の楽曲の模様。メインのリフはダンス素凡夫ですが、歌詞も違います。この日西村さんから各バンドクリスマスの曲を1曲やるようにと指令があって、赤鼻のトナカイをやったようですが、イントロは「太陽と戦慄PART2」や「タブー」などを引用したアレンジ。

 

KERAさんはその後バンドを共にする三浦さんや中野さんとはじめて一緒に演奏した歴史的な一夜。当日吉祥寺でリハをやってそのままバウスへ移動しての本番だったそう。

 

ikari85.jpg

ikari1985-2.JPGikari1985-3.JPGikari1985-4.JPGikari1985-5.JPG

(Live photo:たかださん)