健康 第10回公演「ボーイフレンド」

1990年8月24日〜9月7日 新宿シアタートップス

画像版その1 画像版その2


健康vol.10「ボーイフレンド」用ごあいさつ

1.高校時代の話だ。一人の女性に恋をしていた。恋だ。恋ったら恋だ。自慢じゃないが、あの頃、私は匂いたつように清純で、彼女はもっともっと清純で、ういういしいよい顔をしていた。特に眼が素晴らしかった。
ふり向いてこっちを見るだけで、彼女のために何でもしてあげたい衝動にかられた。彼女は、ただ私が私だというだけのことで、私を信頼しきっていたし、他の誰にも負けないようなまなざしを向けてくれた。私と彼女が私と彼女であるということさえ理由ではなく、理由など何もない本能的な接近の仕方だった。

2.今回の公演のけいこ中、2回倒れた。1度は、よりによって人混の原宿駅ホームで、である。実に間抜けだが、そんなことも言ってられなかった。目を覚ますとそこは病院のベッドで、こーいったコトが実際に起こるんだなぁ、と感激し、そのベッドで一夜を過ごした。実は眠る前に、私は何を思ったか、1で書いた彼女に電話を入れた。どんな話をしたのかは余計なお世話だ、ほっといてくれ。ただ、そこで確信したのは、1で書いたようなことが、ほぼ私の、幼かった私の幻想でしかなかったとゆーコトだった。何暗いこと書いてんだ俺は。

3.その夜は、(その夜とゆーのは病院での夜のことだが)奇妙な夢をみた。再び実を言うと、先程の電話で、私は彼女と何年か振りに会う約束をしようとしていたのだが、結果的にはやっぱりやめた。ところが夢の中での私は、彼女に何年か振りに再会していたのだ。次の日、彼女が三年前に知った、て何嘘の怪談話書いてんだ俺は。

4.それにしても、「イロコイザタ」には皆さん、興味をお持ちになる。「私を会員にするようなクラブには入りたくない」とは、我が敬愛するグラウチョ・マルクスの言葉であり、このジョークを指して「自分の女性観そのもの」と語るウディ・アレンにはまったく同感なのだった。
「好きだとかなんだとか言ってくれるのは別に構わないが、それはどこまで言っても”たかがコトバ”だ」と抜かす某女優の為にも、我々は心で観客のアナタ方に接せねばならない。

5.健康を観にくるような奴には健康を観せたくない。ようこそ。

1990.8.25.AM6:52 KERA