健康 第11回公演「愛と死」

1991年2月15日〜17日 新宿スペースゼロ(他、横浜、仙台、札幌、名古屋、大阪、福岡、浜松にて公演)

上から順に、東京公演のあいさつ文、横浜プレビュー公演のあいさつ文です。


「東京の皆様へ」ケラリーノ・S

 引越す引越すと言って中々引越せずにいる私は未だ恵比寿に住んでいる。恵比寿という街も最近は民家がとり壊され、次々とビルが建っているが、それでもある地域は渋谷区だというのがまるで嘘であるかのように静まりかえっており、家々は庶民的なタタズマイを保っている。
 近所にはびっこの紳士もいれば長髪の歯医者もいる。気のふれた老婆もいれば浅野温子もいるって寸法さ。そして、あたりまえだが彼ら一人一人の日常は同時に存在する。バカのように何も考えずヘラヘラ笑って生きている者にも、人生など無意味だと言ってシリアスに口を閉ざす者にも。
 深い悲しみに支えられた結論の出ない長い沈黙、もうこれ以上何もいりませんと言って目を細めたくなるような至福の退屈、とりあえずこの場をなんとかしなければと焦るあまりの混乱がもたらすどうにもチグハグな空気。それらが同じ一つの街のそこかしこに同時に存在する。
 この物語に登場する様々な人々もまた、嘘のようだが、事実、日出町という街に同時に生きているのだ。
 本当は、まだまだ紹介したいエピソードはたくさんあったのだが、上演時間の関係で止むなくカツアイした、にも拘らず2時間半を越える芝居になった。こうなったらヤケクソである。東京公演に限り、本編終了後、約10分の新作短篇「伏見モンブランホテル1F喫茶室」を上演することにした。
 さて、今回は作家陣に、私が敬愛して止まぬマンガ界の天才三氏をお迎えした。強引な誘いにまんまとのっかってくれた御三方には心より御礼を申しあげます。それから、まあたしかにいろいろ問題はありましたが、ツール・ド・モダンシアターの91年第一弾として我々を選び、健康初の全国ツアーをなんとか最終地である東京まで遂行させてくれた本多企画、リクルートの皆様にも感謝。
 なお、今回選にもれたエピソードの数々は後日、「日出町の人々」として必ずしや公開することを約束して、ハイさようなら。


プレビュー公演の為のあいさつ

今回のお芝居は、長いです。
 こんなに長いヤツをもって全国を廻る為の試演会が、本日の2回の公演です。
 皆様のご意見を伺ったうえで、ソレを取り入れさせて頂いたり無視したりして全国ツアーの間に少しずつ変形してゆく、
そんな愛と死です。       KERA
だからアンケートひとつよろしく。
丸註“長いんじゃないか”とゆー意見は、そんなことはわかってるんで書かないで下さい。


Special Thanks まゆかさん(横浜プレビュー公演)