NYLON100℃ 17thSESSION
「テイク・ザ・マネー・アンド・ラン」

1999年9月3日〜19日 下北沢本多劇場(東京)
         9月24〜25日    道新ホール(札幌)
        10月1〜2日   女性センター「ムーブ」ホール(福岡)
        10月8〜11日   近鉄小劇場(大阪)
    10月14日          南区民文化センターホール(広島)


 彼はちょっと病的な地震恐怖症だ。隣の人の貧乏ゆすりで心臓が止まりそうになることもある。こんな風になってしまったのは小学生の頃観た関東大震災の記録フィルムと、「デビルマン」に続く永井豪のデストピア「バイオレンス・ジャック」の序章に於ける大震災の描写の印象があまりに強烈だったからだと思う。だから95年の阪神大震災の時はとても他人事とは思えず、一人途方に暮れていた。
 戯曲を書き出す時にはいつも、これから紡ぎ出される世界についての漠たる手触りが頭の中にあるだけで、それは「ツルッとした感じ」とか「ドヨーンとした感じ」とか「ガランとした感じ」という、到底キャストやスタッフ達に説明したところで理解してはもらえないようなものだ。今回頭の中にあったのは、阪神大震災の時のあのヘリコプターから空撮された街の風景。他の手掛かりはいくつかの資料、エチュードで提出された役者達の表情、そして今いるここと作品の中のあそことをつなぐ糸の角度だ。脚本が少しづつ出来上がり終盤の執筆にとりかかった頃、トルコ共和国であんなことがあった。それで、現実と虚構とをむすぶ糸の角度がまた大きく変わったのではないかと思う。
 観客のみなさん一人一人それぞれの観かたで楽しんで頂ければ幸いです。
 
 
 

 ケラリーノ・サンドロヴィッチ