NYLON100℃ SIDESESSION#2「カメラ≠万年筆」

1995年8月30日〜9月3日 新宿シアター・トップス

若手公演


「カメラ≠万年筆」御来場の皆様へ
             
ケラリーノ・サンドロヴィッチ

 ナイロン100℃(“ひゃくどしい”と読むのです)のサイド・セッションを、我々は、本公演とは別の様々な実験を試みる場だと考えています。前作は昨年の夏、私に加えて役者全員と演出助手のタイチがテーマに沿ってコントを書き、それを、書き手がイニシアチブをとった演出の下一週間の集中稽古でまとめあげた「喜劇 箸の行方」でした。(御存知でしょうが一応書いておきます。第三弾はレイトショーで上演中の三宅弘城のソロ・ステージです。)
 で、「カメラ≠万年筆」は26名の役者による、一幕五場の青春劇です。(若手と言っても上は33でちっとも若くありませんが、一応昨年と本年のオーディション合格者とゆーコトで、若手っていうらしいです、よく知らんけど。)
 詳しいプロダクション・ノートはパンフレットの売り上げを上げる為にそちらに書かせて頂きました。かつてない文字量の、文字ばかりの、文字だらけの、吐き気がするほど読み応えのあるパンフ(600円!!)です。95年の夏はもう2度と来ないのですから、御観賞の記念に金をドブに捨てたと思ってぜひお買い求め下さい。

 さて、26名のうち19名の役者とはほとんど今回の芝居が初めてと言っていい程浅いつきあいです。5月の「ウチハソバヤジャナイ」の幕が降りるとすぐに私は彼らに招集をかけ、まずそれぞれの“人となり”を知る為に、1ヶ月間のワークショップ(←ホントはこのコトバ嫌いです)を行いました。あれから3ヶ月、人となりも、もうわかりすぎるくらいわからせてくれた者もいれば、未だにどういう人間なのか謎な者もいます。途中、これじゃまずいんじゃないないかと考えて、半ば無理矢理一緒に酒を飲みに行ったりもしましたが、どんな場に出ようがわからない人はわからないままだということがわかったのでした。ただ、その人が何を考えているのかはわからなくても、役者としてどんな使い方をすれば面白いかはわかったりする場合が多々あるってえのが、面白いところですな。

 この物語の舞台は最初から最後まで85年の夏のある大学の映研の部室です。限定された場所を舞台にした芝居を書いたのは十年エンゲキニンをやってて初めてのことです。いつもだったら、台本を書いていて、ふと気まぐれにハイジャックのエピソードを書きたくなっても、卜書きに“瞬時にしてそこは旅客機の中になった”とかなんとか書けばそれでよかったのですが、今回それは許されませんでした。どうあがいてもそこは映研の部室なのです。このような制約を設けたこともあって、いつもより随分とオーソドックスな芝居だという印象が残るのではないでしょうか。静かすぎて眠っちゃった人、ごめんなさい。少しの間、こうした一幕ものを書いていきたいなと思ってます、気が変わるかもしれないけど。それは多分、私にとって最良の手段ではないでしょうけれど、まあ、何事も習練です。11月に上演する「4A.M.」も出演者5名の一幕劇です。
 最後に、この我儘な企画を実現してくれたシリーウォークのみんなと全てのスタッフに、そして、また一つ、私の思いを舞台の上に具体化してくれた26名の役者さん達に、尽きぬ感謝の意を述べさせて頂きます。
 それでは、大変窮屈な中ではありますが、どうぞリラックスして御覧下さい。本日は御来場、本当に本当に本当にありがとうございました。


1995.8.28.PM4:45   劇場ロビーにて


Special Thanks ミミナリさん